再読した感想。以前より理解は深まった気がするけれど、子供の頃と比べて感情移入する力は弱くなったかも。――『クローディアの秘密』E・L・カニグズバーグ著

2月 9th, 2009

クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))
クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))



再読の経緯

このところ、子供の頃読んだ作品を、改めて読み直しています。今回は、『クローディアの秘密』を手に取りました。

  • E・L・カニグズバーグ著『クローディアの秘密』:クローディアという女の子が、弟と一緒にメトロポリタン美術館に家出するという物語。
  • 歌『メトロポリタン美術館(メトロポリタン・ミュージアム)』(作詞・作曲・歌:シンガーソングライター大貫妙子、1984年、NHKの音楽番組『みんなのうた』において放映)。独特な歌詞とアニメーションを持つ。歌詞は前述の「クローディアの秘密」が元になっている。後に作成されたアレンジ版は新居昭乃が担当した。


メトロポリタン美術館 – Wikipedia

上記のような繋がりがありますので、本書自体を懐かしく思い出される方もいるかもしれないし、大貫妙子さんの作品(↓)を懐かしく思い出される方もいらっしゃるかもしれないですね。

メトロポリタンミュージアム


D



感想

ホームズはワトソンが書いてるし、ドリトル先生なら助手の少年が物語を書き留めますよね。本書の場合は、RPGで言えば「ラスボス」と呼びたいような、富豪の老婦人が語り手として登場します。なぜクローディアとその弟の物語を、一緒に冒険したわけでもない老婦人が記述できるのかは、物語が展開するごとに明らかになっていきます。顧問弁護士宛に、「遺言を少し変更したい、なぜならば――」という形で、このお話が展開されます。

P10-11

というのは不公平がもとなのだ、とクローディアは思っていました。クローディアはいちばん上の子で、おまけに女の子はひとりきりでしたから、いろいろ不公平な目にあいました。

(中略)

毎週毎週が同じだということからおこる原因です。クローディアは、ただオール5のクローディア・キンケイドでいることがいやになったのです。

子供の頃は、頭の良いクローディアに共感して読んだ気がします。家出先として、安全で快適な美術館を選ぶとはなんて賢いのだろう、と。

一方、再読時の今回は、老婦人の語りを楽しみつつ、時々弟に同情しつつ、読んだ気がします。クローディアに共感できないわけではないし、理解もできるつもりなのだけど、感情移入はできないという不思議な経験をしました。



さて、美術館で警備の人たちに見つからないように工夫しながら、時には寒さを我慢して噴水の泉をお風呂代わりにしながら、美術館で暮らします。お金をそんなに持ってないし(倹約家の弟が姉の出費を抑えるやりとりも面白いです)、おなかは空くし、ベッドはかび臭いんだけど、じきに彼らは美術館暮らしに慣れます。慣れるまでにはこんな感じで――

P36

「いいわ、いいわ。」クローディアはこたえました。なんとか落ちつこうとつとめたのです。グループのリーダーは、けっして逆上しちゃいけない、たとえそのグループというのが、じぶんとやんちゃな弟のふたりだけであっても。

姉弟で衝突したりしながら、だんだん、チームワークもよくなっていきます。



美術館に慣れたクローディアたちは、ミケランジェロの作品「かもしれない」天使の像の秘密を解こうと挑戦します。図書館に行ってみたり、私書箱を借りて美術館宛に手紙を出してみたり、そしてこの天使の像のことを知りたいという繋がりで、物語の語り手である老婦人の元へたどり着きます。



P191

「うちの人たち、心配してるんですか?」クローディアがききました。

「新聞の写真のところばかり夢中でながめてなかったら、家の人たちが、半狂乱になって心配してるっていう記事が、目にはいったでしょうにねえ。」

クローディアは赤くなりました。

老婦人が登場するまでは、基本的に弟が姉のクローディアにやり込められるシーンが多かったと思うのだけど、老婦人の手にかかると、クローディアも赤くなります。老婦人、何でもお見通しです。クローディア自身がまだ言語化できないような部分についても、お見通しです。



P219

「それは、これが秘密だというだけのことよ。それでクローディアはちがったひとになって、グリニッチに帰れるのよ。」

クローディアはジェイミーを見てうなずきました。わたしのいったことの何かが、通じたらしいのです。

こうして、クローディアが綿密に計画を立てて実行した美術館への家出という冒険は幕を下ろします。二人が両親の元へ安全に送り届けられる部分までは描かれるのですが、二人が両親にどんな風に迎えられたのかといった描写はありません。冒険を通してクローディアが成長したことは本書に描かれています。弟のジェイミーも成長した部分もあるのですが、姉にくらべると幼いですし、何より脇役なので、彼について細かく描写されることはありません。あくまでもこれはクローディアの物語なのです。



再読してみて、今のニューヨークで、クローディアが計画立てようとしたらどんな準備が必要になるのだろうとか、姉視点ではなく弟中心にこの物語を描き直したらどんな作品になるだろうかとか、そんなことを想像しました。



「姉が美術館に家出すると言ってきかないのだが」って弟が2chにスレ立てるとか、「美術館で一週間暮らしてきたけどなんか質問ある」って姉がスレ立てるとか、現代だとそんな話になりそうな気がしなくもないです。ていうか、そもそも現代のクローディアは「快適な家出先」として美術館を選択せず、べつのプランを立てるのかもしれないですね。

現代のクローディアたちは、どうしてるのだろう?



crossreview

http://crossreview.jp/hrkt0115311/reviews/4001140500



書誌

クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))
E.L. Konigsburg 松永 ふみ子

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